頭の整理

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ルーローの三角形

ドイツ生まれの機械工学者フランツ・ルーロー(Franz Reuleaux,1829-1905)が考察したと言われる「ルーローの三角形」という図形があります.

ルーローの三角形は定規とコンパスを用いて作図することができます.作図の手順は以下の通りです.

(1) 線分を1本引きます.この線分を線分BCとし,BCの長さを  { \displaystyle 2r } とします.

(2) 点Cを中心に,半径  { \displaystyle 2r } の円を描きます.この円をPとします.

(3) 点Bを中心に,半径  { \displaystyle 2r } の円を描きます.この円をQとします.

(4) PとQの2つの交点のうち,どちらかを選びAとします.点Aを中心に,半径  { \displaystyle 2r } の円を描きます.この円をRとします.

(5) 弧  { \displaystyle \rm \stackrel{\frown}{AB} } ,弧  { \displaystyle \rm \stackrel{\frown}{BC} } ,弧  { \displaystyle \rm \stackrel{\frown}{CA} } で囲まれた図形がルーローの三角形です.

 

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このルーローの三角形は「定幅図形」の一種であり,差し渡しの幅が常に等しいという性質を持ちます.これは,円の接線は接点を通る半径に垂直であるため,弧  { \displaystyle \rm \stackrel{\frown}{AB}, \stackrel{\frown}{BC}, \stackrel{\frown}{CA} } 上の任意の点から幅をとると,幅は必ず3点ABCで作られる3つの扇形の半径の長さである  { \displaystyle 2r } になるからです.

次に,ルーローの三角形の周長  { \displaystyle L } と面積  { \displaystyle S } を考えてみます.周長は弧  { \displaystyle \rm \stackrel{\frown}{AB}, \stackrel{\frown}{BC}, \stackrel{\frown}{CA} } の長さを足し合わせたものと考えられます.三角形ABCは正三角形であることから,3点ABCで作られる3つの扇形の中心角はいずれも  { \displaystyle \frac{\pi}{3} } になり,線分AB,BC,CAの長さはいずれも  { \displaystyle 2r } であるから,周長は

 { \displaystyle L = 4\pi r \times \frac{\frac{\pi}{3}}{2\pi} \times 3 = 2 \pi r }

になります.この結果から,ルーローの三角形の周長は,同じ幅の円の周長と等しくなることがわかります.なお,幅が同じ定幅図形の周長が一定であることは証明されており,バルビエ(Barbier)の定理と呼ばれています.

面積については,3点ABCで作られる3つの扇形の面積を足し合わせたものから三角形ABCの面積を2つ分引いたものに等しくなるため,

 { \displaystyle S = (2r)^2 \pi \times \frac{\frac{\pi}{3}}{2\pi} \times 3 - 2r \times \sqrt 3 r \times \frac{1}{2} \times 2 }

     { \displaystyle = 2\pi r^2 - 2 \sqrt 3 r^2 }

     { \displaystyle = 2(\pi - \sqrt 3 ) r^2 }

になります.同じ幅の円の面積と比較すると,

 { \displaystyle \frac{2(\pi - \sqrt 3)}{\pi} \fallingdotseq 0.8973 }

であることから,ルーローの三角形の面積は同じ幅の円の面積の約90%であることがわかります.ルーローの三角形は幅が同じ定幅図形の中では最小の面積を持つことが証明されており,ブラシュケ・ルベーグ(Blaschke-Lebesgue)の定理と呼ばれています.

 

 

 

 

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