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主鎖の長さによってアルカンの構造異性体を分類したときの数について

 アルカンとは分子式が一般式  { \displaystyle \rm C } { \displaystyle _n } { \displaystyle \rm H } { \displaystyle _{2n + 2} } で表される鎖式飽和炭化水素のことです。また、分子式が同じで、構造式が異なる化合物同士を、たがいに構造異性体と呼びます。アルカンの構造異性体の種類は、炭素原子の結合の枝分かれの様子で決まります。また、結合している炭素原子の最も長い並びを主鎖と呼びます。この記事では、主鎖の長さによってアルカンの構造異性体を分類したときの数について考えてみます。

 まずは、主鎖の長さが1から5までの場合について、実際に構造異性体を書き上げてみます。以下の図では、炭素原子を黒丸で、炭素原子間の結合を黒線で表します。

主鎖の長さが1のとき:1種類

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主鎖の長さが2のとき:1種類

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主鎖の長さが3のとき:3種類

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主鎖の長さが4のとき:6種類

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主鎖の長さが5のとき:30種類

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これらの例を眺めていると、主鎖の長さが奇数の種類数は、ひとつ前の偶数の種類数に主鎖の長さを掛けたものであることに気づきます。すなわち、主鎖の長さが  { \displaystyle m } の種類数を  { \displaystyle P_m } と表すなら、

 { \displaystyle P_{2l + 1} = \left( 2l + 1 \right) P_{2l} \ \ \left( l = 1,2,\ldots \right) \ \ \ \ldots \left( 1 \right) }

が成り立ちます。これは、 { \displaystyle P_{2l + 1} } の構造式は、 { \displaystyle P_{2l} } のそれぞれの構造式の中心に炭素を  { \displaystyle 1 } から  { \displaystyle 2l + 1 } 個のいずれかだけ追加したものとみなせることからわかります。 

そこで、まずは偶数番目、すなわち  { \displaystyle P_{2l} } を求めます。例として、 { \displaystyle P_{4} \ \ \left( l=2 \right) } の場合を考えます。ここでは、横に伸びた枝分かれのない炭素鎖の持つ炭素のそれぞれに、最大何個の炭素を枝として追加できるかに着目します。一番左側の炭素にはこれ以上枝をつけることができないと考えて、これを1パターンとします。左から二番目の炭素には、枝を最大2本つけれると考えて、これを3パターンとします。元の炭素鎖は左右対称なので、一番右側の炭素は1パターン、右から二番目の炭素は3パターンと考えます。すると、全パターン数は  { \displaystyle 1 \times 3 \times 3 \times 1 = 9 } ですが、これは左右反転すると形が同じになるものを重複して数えています。そこで、

(左右反転すると形が同じになるもののパターン数)=(全パターン数)-(左右反転で形が変わらないもののパターン数)

という関係を使うと、左右反転で形が変わらないものは、左右対称になっている炭素に同じ数だけ枝をつけたものであるから、それは片側だけでパターン数を計算したものに等しく、ここでは  { \displaystyle 1 \times 3 = 3 } パターンとなります。よって、左右反転すると形が同じになるものは、 { \displaystyle 1 \times 3 \times 3 \times 1 - 1 \times 3 = 6 } 個あります。これら6個のパターンについては、重複して数えているため、全パターン数からこれら6個のパターンを2で割った3パターンを引いたものが、求める種類数になります。したがって、

 { \displaystyle P_{4} = 1 \times 3 \times 3 \times 1 - \left( 1 \times 3 \times 3 \times 1 - 1 \times 3 \right) \div 2 = 6  }

となります。

このことを、一般の  { \displaystyle l } について考えると、 { \displaystyle P_{2l} } は次式で表せます。

 { \displaystyle P_{2l} = \left( \prod _{k=1} ^l 2l -1 \right) ^2 - \frac{1}{2} \left \{ \left( \prod _{k=1} ^l 2l -1 \right) ^2 - \prod _{k=1} ^l 2l -1 \right \} }

        { \displaystyle = \frac{1}{2} \left( \prod _{k=1} ^l 2l -1 \right) \left \{ \left( \prod _{k=1} ^l 2l -1 \right)  + 1 \right \} \ \ \ \ldots \left( 2 \right) }

  { \displaystyle \left( 1 \right) } { \displaystyle \left( 2 \right) } 式から、奇数番目については、次式で表せます。

 { \displaystyle P_{2l+1} = \frac{1}{2} \left( \prod _{k=1} ^{l+1} 2l - 1\right) \left \{ \left( \prod _{k=1} ^l 2l -1 \right)  + 1 \right \} }

 

 

Chemical Applications of Graph Theory

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