硫安と消石灰はいずれも畑の土づくりに用いる資材です.硫安は土の中に含まれる窒素を補うために,消石灰は土のpHを調節するためにそれぞれ用います.しかし,この二つの資材を同時に混ぜて使うことは危険を伴います.それは,人体に有毒なアンモニアガスが発生するからです.
では,なぜ硫安と消石灰を同時に混ぜて使うとアンモニアガスが発生してしまうのでしょうか.この理由を高校化学の範囲から説明してみます.
まず,硫安は化学式で と表せます.この化学式から,硫安は弱塩基であるアンモニアの塩であることがわかります.一方,消石灰は化学式で と表せます.消石灰は強塩基に分類されます.そのため,硫安と消石灰を混ぜると弱塩基,すなわちアンモニアの遊離が起こります(次式).
遊離するアンモニアの一部分はアンモニアガスとなり大気中に放出されます.このアンモニアガスが人体に有毒であり,刺激臭を伴うため,硫安と消石灰は同時に混ぜて使ってはいけないのです.