意義はどこから

※以下は，生きていくことに疑問を感じた方に向けたお話です．

いぎ【意義】

１．言葉によって表される意味・内容．

２．その事柄にふさわしい価値．値うち．

―デジタル大辞泉，小学館，より引用

意義はどこから生まれるのか．この問いに対するマクロな視点からの答え（仮定）は，大きく次の２つに大別されると思います．

Unknown（神，創造主などと呼ばれる）　｜　人間（ホモ・サピエンス）

・意義がUnknownにより作られたとする場合

この立場は「神の啓示」という形で教義を表す宗教や，徹底した物理的世界観に現れます．

前者は，「預言者」と呼ばれる人間が神より受けた「啓示」を表す，という構図を取ることで意義がUnknownにより作られたことを主張します．

後者は，人間活動を含めあらゆる現象はすべて物理法則に支配されているとします．仮に人間の意志というものが存在するとしても，それは物理法則に則った反応であり，人間が操作可能な「自由意志」というものは存在しないとします．そして，意義を作ったのはこの世界の物理的状態と物理法則を規定したUnknownであると主張します．

この立場では，意義は人間の信念とは独立して存在するものとされます．例えば，世界のすべての人間が物理法則を信じない場合でも物理法則は存在し，そこから導かれる意義もまた存在するとされます．

・意義が人間により作られたとする場合

この立場は人間が操作可能な「自由意志」の存在を認めます．そして，あらゆる意義は煩悩や自由意志といった人間の精神によって作られたものであるとし，意義は作り変えることができることを主張します．

この主張のもとでは「Unknown」も人間によって作られた意義に含まれます．

また，すべての意義を「作りもの」と主張するため，人間の精神を除く事柄についての「真実」という概念は形骸化します．例えば，科学は「真理の探究」ではなく「現象についての説得力のある説明作り」とみなされます．

この立場では，意義は人間の信念に依存して存在するとされます．ある意義mを信じている人間が世界に存在するならば，ある意義mは世界に存在します．ある意義mを信じている人間が世界に存在しないならば，ある意義mは世界に存在しません．

以上，意義の出処についての２つの仮定について述べました．この２つの仮定は，片方を認めてしまうともう片方がそれに包まれてしまいます．それは，「Unknown」と「人間」という２つのキーワードが互いを説明する能力を有しているからです．それゆえ，どちらの仮定を採用しても，世界を同じように説明することができます．

今後，脳の働きを完全に表す方程式が完成し，人間と見分けがつかないほどに人工知能が発達したとしても，この２つの仮定のどちらかが淘汰されるということはないと思います．

最後に，生きることの意義がわからなくなったときの対処法について述べておきます．

意義がUnknownにより作られたと仮定するならば，教典を読み直すか聖職者に尋ねることが有効です．徹底した物理的世界観を持つ方は，物理学の勉強に励みましょう．

意義が人間により作られたと仮定するならば，方法は２つあります．１つは，既存の生きることの意義を用いることで，具体的には他人に聞く，本や新聞を読む，昔の自分が書いたものを見返す等の方法があります．なお，既存の生きることの意義を用いることは，意義がUnknownにより作られたと仮定する場合に用いる方法と似ています．両者の違いは，既存の生きることの意義の参照先の多様性にあります．

もう１つの方法は，新たに生きることの意義を作成して用いることです．この方法は，全く新しい生きることの意義を産み出す可能性を持ちます．ただし，新たに産み出された意義が世界に存在し始めるかどうかはわかりません．少なくとも自分がその意義を信じた場合，その意義は既存の生きることの意義としてこの世界に存在し始めます．

青空のナミダ