頭の整理

頭の中を整えるために,色々と書き綴ります

パスカルの三角形を途中で折り返してみると

パスカルの三角形の各段の数を左詰めで書くと下のように書くことができます.ただし,”|”は各数を区別する仕切りを表しています.

 

1段目:1

2段目:1|1

3段目:1|2|1

4段目:1|3|3|1

・・・

 

このパスカルの三角形を途中の段で折り返し,以後折り返しをした段の幅(仕切りの数+1)以上には広げないようにすると,いろいろな規則的な数列が得られます.

(I)3段目で折り返した場合

例えば,3段目で折り返すと,次のようになります.

 

1段目:1

2段目:1|1

3段目:1|2|1

4段目:3|3

5段目:3|6|3

6段目:9|9

7段目:9|18|9

8段目:27|27

9段目:27|54|27

・・・

 

2段目以降は幅が2の段と3の段を繰り返すことがわかります.幅が2の段に現れる数字を小さいほうから順に並べると,

1,3,9,27,...

となり,この数列は  { \displaystyle 3^{n-1} \left( n=1, \ 2, \ 3,\ \ldots \right) } であると予想されます.

 

(II)4段目で折り返した場合

4段目で折り返した場合は,次のようになります.

 

1段目:1

2段目:1|1

3段目:1|2|1

4段目:1|3|3|1

5段目:4|6|4

6段目:4|10|10|4

7段目:14|20|14

8段目:14|34|34|14

9段目:48|68|48

・・・

 

現れる数を小さいほうから順に並べると,

1,2,3,4,6,10,14,20,34,48,68,...

となります.この数列は初項を  { \displaystyle a_1=1 } ,第2項を  { \displaystyle a_2=2 } とすると,第3項以降は次の連立漸化式で表すことができます.

 { \displaystyle a_{3n} = a_{3n-1} + a_{3n-2} \ \ldots (1) }

 { \displaystyle a_{3n+1} = a_{3n} + a_{3n-2} \ \ldots (2) }

 { \displaystyle a_{3n+2} = 2 a_{3n} \ \ldots (3) }

上の連立漸化式は次のように変形することで,三項間漸化式に帰着できます.

まず, { \displaystyle (1) } { \displaystyle n } に  { \displaystyle n + 1} を代入します.

 { \displaystyle a_{3n + 3} = a_{3n+2} + a_{3n+1} \ \ldots (1)' }

続いて, { \displaystyle (1)' } に  { \displaystyle (2) } と  { \displaystyle (3) } を代入します.

 { \displaystyle a_{3n + 3} = 3 a_{3n} + a_{3n-2} \ \ldots (1)'' }

次に, { \displaystyle (1)'' } { \displaystyle (1) } をもう一度代入します.

 { \displaystyle a_{3n + 3} = 4 a_{3n} - a_{3n-1} \ \ldots (1)''' }

ここで, { \displaystyle (3) } の  { \displaystyle n } に  { \displaystyle n - 1} を代入します.

 { \displaystyle a_{3n-1} = 2 a_{3n-3} \ \ldots (3)' }

最後に, { \displaystyle (1)''' } に  { \displaystyle (3)' } を代入すると,三項間漸化式が現れます.

 { \displaystyle a_{3n + 3} = 4 a_{3n} - 2 a_{3n-3} \ \ldots (1)'''' }

 { \displaystyle (1)'''' } を解くと,次式が得られます.

 { \displaystyle a_{3n} = \frac{ \left( 1+ \sqrt{2} \right) \left( 2 + \sqrt{2} \right) ^{n} -  \left( 1- \sqrt{2} \right) \left( 2 - \sqrt{2} \right) ^{n} }{2 \sqrt{2} } \ \ldots (4) }

また, { \displaystyle (3) } に  { \displaystyle (4) } を代入すると,次式が得られます.

 { \displaystyle a_{3n+2} = \frac{ \left( 1+ \sqrt{2} \right) \left( 2 + \sqrt{2} \right) ^{n} -  \left( 1- \sqrt{2} \right) \left( 2 - \sqrt{2} \right) ^{n} }{ \sqrt{2} } \ \ldots (5) }

 { \displaystyle a_{3n+1} } については,割愛します.

 

(III)5段目で折り返した場合

5段目で折り返した場合は,次のようになります.

 

1段目:1

2段目:1|1

3段目:1|2|1

4段目:1|3|3|1

5段目:1|4|6|4|1

6段目:5|10|10|5

7段目:5|15|20|15|5

8段目:20|35|35|20

9段目:20|55|70|55|20

10段目:75|125|125|75

11段目:75|200|250|200|75

12段目:275|450|450|275

13段目:275|725|900|725|275

・・・

 

奇数段目の中央に現れる数を小さいほうから順に並べると,

(い)1,2,6,20,70,250,900,...

となります.また,偶数段目の左から2番目に現れる数(ただし,2段目は左から1番目)を小さいほうから順に並べると,

(ろ)1,3,10,35,125,450,...

となります.また,奇数段目の左から2番目に現れる数(ただし,3段目から数え始める.そして,3段目は左から1番目)を小さいほうから順に並べると,

(は)1,4,15,55,200,725,...

となります.また,偶数段目の左端に現れる数(ただし,4段目から数え始める.)を小さいほうから順に並べると,

(に)1,5,20,75,275,...

となります.

これらの数列はいずれも同一の漸化式に従っているようです.(い)の数列は第4項以降を,(ろ),(は),(に)の数列は第3項以降を次式で計算することができると予想できます.

 { \displaystyle a_{n} = 5 a_{n-1} -5 a_{n-2} \ \ldots (6) }

試しに,(に)の数列の初項1と第2項5を使って  { \displaystyle (6) } を解くと,次式が得られます.

 { \displaystyle a_{n} = \left( \frac{ 5 + \sqrt{5} }{2} \right) ^{n} - \frac{1}{ \sqrt{5} } \left( \frac{ 5 - \sqrt{5} }{2} \right) ^{n} \ \ldots (7) }

 

折り返しの場所をさらに深い段にしたり,数え方を工夫すれば他にも様々な規則性のある数列が得られそうです.

 

 

 

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